「生命保険で貯蓄」の間違い

おはようございます。
5時起きの税理士大谷です。
個人の確定申告期限が伸びていますが、昨日ほぼ終了しました。

前回の【医療保険はいらない?】に引き続き、生命保険の話です。
今回は、「公的年金が信用できないので、個人年金保険に加入」を検証します。

前回から引用している後田亨さんの書籍『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』は、30歳目前の女性との対話形式になっていて、とても読みやすいです。
相手の女性は実在の人物で、後田さんとの対話を通して、「不安をあおる広告等に心を乱すことがなくなり、今後(貯蓄を含め)自由に使えるお金がふえることになった」(p.8)そうです。このブログがきっかけで正しいお金・保険の知識を持つ人が増えれば幸いです。

後田亨.青春出版社.2017

1.生命保険は資産運用に向いていない

貯蓄のつもりで生命保険料を払っている、公的年金だけでは将来不安なので、個人年金に入っている、という方もいると思います。
しかし、万が一の時の保障と資産運用は本来別のものです。生命保険会社の個人年金は、加入者が払った保険料から保険会社の経費を差し引いた後、国債等で運用し、支給する年金に充てる仕組みです。
資産運用をプロに任せる場合に、投資信託という仕組みがあります。販売会社、運用会社、管理会社に手数料を支払って運用してもらい、手数料以上の利回りを目指します。手数料の割合は利回りに直結するため、投資信託を購入する場合には、必ず確認すべき事項です。
投資信託があらかじめ手数料が開示されているのに対し、保険会社に運用してもらう場合手数料は開示されていません。以前、大手生保の外交員の方に聞いた時も答えて頂けませんでした。
投資は、できるだけ源流に近いところで買うのが鉄則です。生命保険会社が買っている国債等を直接購入すれば、保険会社のコスト分はリターンが増えるのです。日本国債を直接買える「個人向け国債」は、証券会社や銀行で取り扱っています。しかし、ここ5年ほどは最低保証金利の0.05%(固定金利3年)になっており、金利の魅力はあまりありません。
ネット銀行を中心に0.1%以上の定期預金(1年が多い)があるので、こちらの方が検討対象になるかもしれません。
でも自分で資産運用するのはハードルが高く、「運用って何を選べばいいか分からない。」という声はあると思います。そんなときに判断の重要な要素となるのが、掛金を出したときに節税メリットです。

2.生命保険料控除を使わないともったいない?

節税メリットを語る際に出てくる一つが、生命保険料控除です。私自身も、保険会社の営業員から、「生命保険料控除を使わないともったいない」と、個人年金保険を勧められたことがあります。しかし、生命保険料控除(個人年金)の控除額は、4万円が上限です。住民税を合わせた税率は15%~20%※で、これによる節税額は年間1万円にもならないのです。
個人年金保険の節税額は、多くの場合年間1万円程度ですが、掛金全額が控除対象になるのが小規模企業共済やiDeCo(イデコ)です。これについては、別の機会に書きます。

※年収300~600万で社会保険加入の場合。ある個人年金保険比較サイトで、節税額の計算に社会保険料が考慮されていないと思われるものがありました。社会保険料控除を考えると、書かれている税率よりも低くなり、節税額は表示されているより小さいのです。
パンフレット等に書いている節税額を検証したい方は、ご相談ください。

3.住宅ローンがある人は、繰上返済が最も確実な資産運用

住宅ローンがある人は、ローン残高の1%程度を利息として支払っています。
そこで、余裕資金で1%以上の利回りを目指して運用するなら、繰上返済をするという選択があります。
お金を投じて1%以上の利回りを得るのは、運用機関への手数料もかかり、不確実性が伴います。一方、住宅ローンの元本を返済すれば、返済分にかかる利息1%は確実に減少します。3/15現在、米国債10年物の利回りが1%を切っており、安定的に1%の利回りを得ることも困難な状況です。定期預金などに余裕資金がある方は、繰上返済を検討してはいかがでしょうか。インターネット経由で一部を繰上返済する場合には、手数料も無料なのが主流です。
住宅ローンは35年等で借りていることも多いと思いますが、ずっと同じ収入があるかどうかは不確定です。将来の収入減少を個人年金等で補い、住宅ローンを返していこうと考える人もいるかもしれません。バブル期に加入した個人年金保険で、掛金の倍近くをもらっているお客様もいらっしゃいます。しかし、現在そのような保険は存在せず、そのお金を繰上返済に回した方がコストもかからず、将来の支出が減るため、家計は楽になると思います。

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